2024年もあと数日で幕を閉じようとしています。今年も沢山の方々に支えられ、無事に過ごす事が出来ました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。
皆さんにとって、今年はどんな一年でしたでしょうか?
この一年を振り返ってみると、私はヴァージンオーストラリア航空に転職して2年目を迎え、新しい職場環境やフライト生活にも徐々に慣れ親しんで、忙しくも充実した毎日を過ごせた様に思います。
残念ながら、当社は来年2025年2月を以って、ケアンズー羽田路線からの撤退を決定し、以降フライトで日本に飛ぶことが出来なくなってしまいます。短い間でしたが、今年もこの路線に乗務させて頂けたのは、大変光栄でした。
ケアンズから羽田空港までの飛行時間は、およそ7時40分。このフライトは、ケアンズを北上し、パプア・ニューギニア、グアム上空を経て羽田へと向かいます。長時間太平洋上を飛び続け、いよいよ日本領空に入り、ふと窓を覗くと、夕日に染まった富士山が、はるか遠くに見えてきます。富士山が見えると羽田はもうすぐ。何度も眺めている光景であっても、毎回その美しさに魅了され、ああ、日本に帰って来たなという実感を抱かずにはいられません。機長のアナウンスを日本語でもご案内すると、日本人のお客様含め、乗客全員が、その美しさに見とれながら、長時間の空の旅を締めくくります。恐らく日本人のお客様は私と同様、自国の美しさを再確認する瞬間ではないでしょうか。そして外国人のお客様は、これから訪れる日本の神秘に、ワクワクされる瞬間ではないでしょうか。
今年はこの羽田便で東京滞在中、オーストラリア人の同僚達を連れて、東京近郊の観光地を案内しながら、共に日本での滞在を満喫出来た事も、大変良い思い出となりました。
羽田行のフライトは、オーストラリア人クルーに大人気で、皆、羽田便が入るのを心待ちにしています。春には上野公園へお花見に。初夏には箱根まで足を延ばし、同僚のクルー達と大変楽しい時間を過ごしました。こうしてほんの少しでも、オーストラリア人の同僚に自分の国を紹介し、仕事以外でも互いの友情を深め合えることは、大変素晴らしく、有難い事だと思います。
また逆に、オーストラリア国内滞在では、オーストラリア人クルーのお陰で、現地での滞在を大いに楽しませてもらう機会にも恵まれました。
今年3月、パースに丸一日滞在出来るフライトが入った際には、皆で近くのロットネスト島に渡りました。パースからフェリーに乗って約90分。自然豊かな美しい島を日帰り観光で楽しみました。
ロットネスト島に到着すると、私達は貸自転車を借りて、島を一周しました。
紺碧の海と、白い砂浜のコントラストが実に美しいロットネスト島ですが、島内にはピンクレイクと呼ばれる塩湖もあります。
また、ロットネスト島には、クオッカという世界で最も幸せな動物と言われる小さな有袋類が生息しています。大変フレンドリーな動物で、人間を恐れません。島のあちこちで見かけました。
本当はもう少し島を探検したかったのですが、夜のフライトに備えて余力を残しておかなければいけません。早めにパースのホテルに戻り、フライトの準備をしました。
私達クルーは、年間6週間の有給休暇を取ることが出来ます。普段不規則な生活を強いられ、フライトで家も留守がち。クリスマスやイースター、大切な家族の誕生日や結婚記念日なども、犠牲にすることがしばしばです。そんな私達にとって、この6週間の有給休暇は、家族と過ごしたり、自分だけの大切な時間を過ごす為に、大変貴重な充電期間となります。今年、私はこの有給休暇を大きく2回に分けて、1回目の休暇はバリ島のウブドで過ごし、2回目の休暇はトルコで過ごしました。
私達航空会社の職員は、スタッフ用の特別価格で飛行機に乗ることが可能です。勿論、正規料金を支払ったお客様が優先されますので、空席があれば乗せてもらえるという原則です。これは旅行好きの私達クルーにとって、何物にも代えがたい大変貴重な特権です。
1回目の休暇では、バリ島中心部にあるウブドという自然豊かな村に滞在しました。毎日ヨガに通い、11世紀に建てられたヒンズー教寺院 Pura Mengening を訪れ、聖なる泉でお清めの沐浴をしました。儀式の後には、身も心も浄化され、大変清々しい気持ちになりました。又、ウブドにはベジタリアンやビーガンのカフェやレストランが多く、毎日大変美味しいビーガンのお食事も頂きました。数日間ウブドで過ごし、仕事への活力を養うことが出来ました。
2回目の休暇は、10月半ばから11月初旬にかけて、以前から興味のあったトルコを訪れました。
トルコは広い国土の中に、観光名所が離れて点在している為に、旅程を立てるのに苦労しましたが、行きたい場所を4つに絞り、LCCの国内線や長距離バスを上手く利用して、効率よく回れる様にコースを考えました。まず最初の行き先はイスタンブール、2つ目はボドルム、3つ目はパムッカレ、4つ目はアンタルヤの順で旅程を組みました。
イスタンブールは、ボスポラス海峡をはさんで、東側がアジア大陸、西側がヨーロッパ大陸に分かれており、東西の文化が混在する大変エキゾチックな港町です。イスタンブールの中心部にホテルを取って、連日トラムや徒歩で観光名所や寺院を巡りました。トルコの人々は大変親日的で、親切でした。言葉は通じなくとも切符を買う時や、降りる駅を教えてくれたりと、幾度となく助けて頂きました。
イスタンブールを代表する名所のひとつ、アヤソフィアは、ビザンティン帝国時代に、キリスト教の大聖堂として建設されたものの、コンスタンティノープルが陥落し、オスマン帝国の時代になると、イスラム教モスクに改築された歴史的に大変珍しい建築物です。
また、トルコの街中には、野良猫や野良犬がたくさん生息しています。しかし、街全体がみんなでこれらの動物のお世話をしているのです。私も滞在中は、毎日スーパーマーケットのペットフード売り場で猫用のビスケットを購入し、バッグに忍ばせては、こうして行き交う子猫に与えていました。
イスタンブールで4日間過ごした後は、2番目の目的地、ボドルムに向かいました。ボドルムはトルコの南西、エーゲ海に面した大変美しいリゾート地です。まるでギリシャの島々を彷彿させる白い建物と青い空。イスタンブールの喧騒を離れ、しばしボドルムで静かな数日を過ごしました。
ボドルムの次は、長距離バスに乗って、3番目の目的地パムッカレに向かいました。まず、デニズリという都市まで長距離バスで移動し、更にローカルバスに乗り継いで、パムッカレと呼ばれる石灰棚を訪れました。パムッカレは、ユネスコ世界遺産にも登録されたトルコを代表する観光地の一つです。長い年月をかけて、濃度の高い炭酸塩と石灰を含んだ温泉が、台地から流れ落ちる中で冷却され、炭酸カルシウムだけが残り、このような棚田状の石灰群となったそうです。裸足になって石炭棚の上を歩くことも出来ますし、足湯の様に、座って温泉を楽しむ事も出来ました。
パムッカレの次は、再び長距離バスを利用して、最後の目的地、アンタルヤへ移動しました。温暖な気候に恵まれたアンタルヤは、地中海に面した大変美しい港町で、ヨーロッパ各地から沢山の観光客が訪れていました。街の中心部から、ノスタルジックトラムと呼ばれるレトロなトラムに乗って終点まで行くと、何と美しいターコイズ・ブルーの絶景が広がります。アンタルヤには、旧市街や遺跡など、他にも見どころが豊富に存在し、観光客を魅了して飽きさせません。
また、トルコの街角では、その場で絞られるフルーツジュースを簡単に購入する事が出来ます。私はすっかりザクロのジュースが気に入って、行く先々で毎日ザクロのジュースを頂きました。
約2週間の旅はあっという間で、帰りはカタールのドーハを経由してブリスベンに戻りました。
今回、御紹介させて頂いた通り、今年も公私共に、国内外の旅を大いに楽しませて頂きました。私のエネルギーの源は、まさに旅です。こうしてあちこち飛び回り、新しい発見をし、色々な人々に出逢い、感動し、刺激を受けることで、人生の幅がどんどん広がってゆくのです。
さて、2025年はどこへ旅に出かけましょうか?
皆さんにとって、新年が素晴らしい一年となります様に、心からお祈りしています。
今年もお世話になり、誠にありがとうございました。