Bendigo

Australia
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VIP チャーター機

先週から一週間のVIPチャーター便を担当し、南オーストラリア州都アデレード、ビクトリア州のベンディゴ、ニューサウスウェールズ州のバサーストにそれぞれ数日ずつ滞在しています。私の勤務するチャーター会社は、数年前にオランダ王室から購入したVIPジェット機を保有しています。このオランダ・フォッカー社F70のVIPジェット機は、第六代オランダ・ベアトリクス女王が所有したプライベートジェットで、その息子で現オランダ国王ウィレム・アレサクンダー王も、実際にパイロットとしてこの飛行機を操縦していました。我が社では、特別なVIPチャーターに、この元オランダ王室御用達の飛行機を使用します。今回のチャーター便にも、この飛行機を利用しました。

この由緒ある飛行機に乗務する度に、身の引き締まる思いがします。今回もシェフが同乗し、機内食を機上で用意してくれました。フライトアテンダントは二人乗務。飛行中はフル回転でお客様へのサービスに集中します。下準備と打ち合わせは入念に行いますが、フライト中、予想外の事が起きたり、計画通りに進まなかったりして、カーテンの後ろでは様々なドラマが繰り広げられています(笑)。それでも、ただただお客様が機内サービスを楽しんで下さる事だけを願って、全力を尽くして出来る限りのおもてなしをします。飛行機が無事に目的地に到着し、お客様がお降りになる時、満面の笑みで御礼を言って下さる瞬間こそ、私達の至福の瞬間です。ホテルに到着し、安心したとたんどっと疲れが押し寄せます。それでも、休憩後は、ステイ先での時間をクルー仲間と一緒に思う存分楽しみます。今回は、ヴィクトリア州のベンディゴという街を御紹介します。

Bendigo

今回滞在しているベンディゴという街は、メルボルンからおよそ北西150キロに位置する人口約10万人の街で、かつては金鉱の発見・採掘により繁栄を極めた歴史の街です。ちょうど私の故郷・下田にペリー提督が黒船を率いて訪れた頃(1850年代)、ベンディゴはゴールドラッシュに沸きました。金が採掘されると、それまで殺伐とした土地に過ぎなかったベンディゴに、一年も経たない間に4万人もの人々が押し寄せたと言われます。今でも街のあちこちに、荘厳なヴィクトリア朝の建物が残り、当時のベンディゴの繁栄の様子を偲ばせます。

今では閉山し、博物館の様になっているセントラル・デボラ・ゴールドマインを見学しました。旧式のエレベーターでどんどん地下に降りていきます。私達が見学したのは地下60メートル程度の浅い採掘現場でしたが、この金鉱の一番深い所は地下400メートルだそうです。外から一切遮断された、冷たく湿った劣悪な労働環境の中で、多くの人々が金採掘に従事しました。気管支炎や肺病などを患ったり、掘削機の騒音で聴力を失う労働者も多かったそうです。金を手に入れる為に、常に危険と隣り合わせ、まさに命がけの作業だった様です。

地上には長閑な景色が広がり、湖にはブラックスワンが泳いでいました。

現在、南半球のオーストラリアは夏を迎えていますが、今日のベンディゴの最低気温は3℃、最高気温は16℃です。私の住むブリスベンの冬の気温よりずっと低く、大変肌寒く感じます。

チャーター便では、ベンディゴの様に、大手航空会社が乗り入れておらず、機内食や機内でサービスするドリンク類を調達する会社も存在しない所へ飛ぶ場合がほとんどです。私達クルーは、フライト以外にも、次のフライトで使用する食器やテーブルクロス、ドリンク類、機内食、機内を飾るお花など、細かいものの管理や調達をしなければなりません。一見面倒な様ですが、お客様に手作りのおもてなしが出来る事をとても楽しんでいます。次のフライトも、お客様に喜んで頂ける様に、心を込めて準備したいと思います。