Flight Attendant

私は子供の頃から、外国の文化や歴史に大変興味を持っていました。当時の人気番組「兼高かおる・世界の旅」が大のお気に入り。世界のあちこちを飛び回ってみたい、兼高かおるさんの様に、訪れる先々で現地の人達と気さくに交流し、それぞれの文化に直接触れてみたい。同時に、日本の文化を海外の人々に伝えていきたい、そんな気持ちが募って、フライトアテンダントを目指しました。安定した日系大手の航空会社に就職出来れば、日本を離れる事もなく、充実したフライト生活を送る事が出来たでしょう。しかし私は、そこであえて日系ではなく、海外ベースの外資系航空会社で働くことを希望していました。当然、私の様な未熟者では、日系の航空会社の入社試験に挑戦したところで、到底合格出来るわけがありません。万一、入社出来たとしても、日本の会社にいては、私が本当に見たかった世界を見る事は出来ません。実際に海外に暮らしながら、外国人クルーと一緒に仕事をする中で、それぞれの国の言語、文化、習慣などを体験してみたかったのです。同時に、海外の人々に日本の文化や素晴らしさを紹介したい。私にその最初のチャンスを与えてくれたのが、タイ国際航空でした。

タイのバンコクに暮らしながら、タイ人クルーと一緒に仕事をした6年間は、私の人生にかけがえのない貴重な経験と学びを与えてくれました。タイ人の同僚や友人達と生活を共にしながら、タイ語、現地での食習慣、生活様式を次第に身につけていきました。同時にタイでの生活を大いに楽しみました。しかし、海外生活は良い事ばかりではありません。バックグラウンドも言語も全く異なる民族と一緒に仕事をするのは、大変な苦労も伴うものです。嫌な思い、悔しい思いをする度に、今度は日本人の優秀さや実直さ、几帳面なところが際立って見えました。つまり、海外に出たことによって、自国を外から見る事が出来る様になったのです。それぞれの国の違いから、謙虚に様々な事を学び、自分の人生に生かしていける様になったのは、大きな収穫でした。

15年前に来豪し、今度はオーストラリア人のクルーと一緒に働き始めました。オーストラリアでは、これまた違った意味で、様々な貴重な体験をさせて頂いております。アジア人同士では、特に言葉を介さなくても、互いの気持ちを「察する」ことで分かり合える場合が多々あるものですが、白人の場合は何事も「言葉で表現」しなければ気持ちはなかなか伝わりません。いちいち言葉で説明しなくとも、人の心を読もうとする日本人の繊細さに改めて感心すると同時に、オージーからは、我慢しなくてもいい、多少ずうずうしくとも自己主張していいんだと教わります。ただ、どんなにオージーに囲まれていても、私はやはり日本人で、日本人の謙虚さや繊細さを美しいと思う価値観に変わりはありません。オーストラリア人社会にうまく合わせながらも、本来の自分の姿勢は、ずっと崩さずにいようと思っています。

日本に住み続けていれば、しなくて良かった苦労はたくさん経験しました。それでも、日本を出なければ見えなかったもの、学べなかったもの、体験出来なかったものは計り知れません。子供の頃からの好奇心が発端となり、外資系航空会社のフライトアテンダントになったわけですが、どんな苦労にも、どんな経験にも、決して後悔はありません。そして今後もずっと、多文化の中で私の学びと挑戦は続いていくでしょう。この場をお借りして、私のフライトアテンダント奮闘記をお伝えしていきたいと思います。

 

 

 

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