Glenelg

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Glenelg 滞在

皆さん、大変御無沙汰して申し訳ありませんでした。

私は今、このブログを南オーストラリア州、アデレードのグレネルグという海辺の街で作成しています。しばらく多忙を極めていましたが、やっと皆さんに近況をお伝えする余裕が出来ました。

この2か月間、私は会社の定期試験やトレーニングに追われ、多忙な毎日を過ごしていました。オーストラリアの航空会社に所属するフライトアテンダントは通常、年に2回行われる定期試験にパスしなければなりません。今年もその時期がやって来ました。ひとつは地上にて、駐機している飛行機の中で行われます。緊急事態を想定し、地上及び水上に不時着した場合、マニュアルに沿った脱出を遂行出来るかどうか。パイロットが飛行中意識不明になった場合どう対処するか。飛行中機内で火災が発生した場合どう処理するか、ハイジャックの対応などが問われます。実技試験と筆記試験があり、丸一日かけて試験が行われます。もうひとつの定期試験は、ラインチェックと言って、空の上で飛行中に行われます。クルールームに出勤し、フライトをこなし、空港に帰って来るまで、通常業務をマニュアルに沿って正しく行っているかどうかが審査され、筆記試験も課されます。このラインチェックも丸一日かけて行われます。双方とも合格基準に達しなければ、更なるトレーニングが課され、二度目の試験にも不合格となれば、停職処分、更には失業となる場合もあります。お客様の人命をお預かりしているのですから、厳しいのは当然です。毎年この試験を受けているわけですが、何年経っても試験の前には緊張します。試験の前にはマニュアルを開いて何度も復習し、時にはCA同士でフライト中に質問を出し合ったりして準備をします。

今年はこの2つの定期試験に加え、更に大きなチャレンジが重なりました。最近、私の勤務している航空会社では、新しい機種の飛行機を多数購入した為に、その機種の地上訓練と、空の上での訓練を両方修了し、更にその試験にもパスしなければならなかったのです。

そして大変光栄なことに、私は最近トレーナーに昇格しました。新しく我が社に入社してきたCA、及びキャビンマネージャーに昇進したCAのトレーニングを担当します。トレーナーになる為の訓練と試験もあり、連日フライトを終えると机に向かう日々が続きました。

更には、毎年更新しなければならないCPR心肺蘇生と救急処置のサーティフィケート、2年に一度更新しなければならない危険物取扱者サーティフィケート、ヒューマンファクターなど、細々したコースや試験が同時に重なって、どこから手をつけて良いやら、この2か月間は次から次へと様々な訓練とコースに追われました。

最初は、ロスターを見ただけで目眩がしそうなスケジュールでしたが、お陰様で何とかひとつひとつを順番にこなし、残すところ試験はあと一つだけとなりました。

Glenelg 滞在

私の勤務する会社は、豪州全土に6つのベースを抱えています。本社は私の住むブリスベンにあります。この度、トレーナーに昇進した私は、アデレードに派遣され、アデレードベースのCA及びこれからキャビンマネージャーに昇進するCAのトレーニングを担当しています。アデレード空港から車で15分程の海辺の街グレネルグのホテルに滞在しながら、毎日空港へ通い、訓練生のCAと一緒にフライトに乗務しながらトレーニングを行っています。新米トレーナーの私は、まだまだ改善すべき点も多く、反省の日々。フライトの後にはどっと疲れが押し寄せます。それでも、夕暮れに目の前のビーチを散歩して、美しい海を眺めながら、エネルギーを補充しています。

トレーナーとして

正直、トレーナーになった今でも、私には「自信」がありません。上司からトレーナーの誘いを受けても、ずっと断り続けてきました。しかし、いつまでも逃げ腰では成長がありません。入社当時から世話になっている上司に対する義理も感じていました。今回ばかりは断り切れず、引き受けることにしました。

勿論、業務に必要な知識を教える事がトレーナーとして最大の役割でしょう。しかし、トレーニングそのものが、楽しくて興味を沸かせるものでなければ、生徒はついてきません。そして、私が一番大切だと思うことは、教える側と生徒の間の「信頼関係」です。シンガポールのインターナショナル・スクールで、欧米人の小学生に第二外国語としての日本語を教えていた時に、私が身をもって感じた事です。

私は遠い昔、自分がまだCAになりたてだった頃の不安な気持ち、心配事、疑問に思っていたことなどを思い出してみました。やはり、訓練生にとって、私は頼れる存在でなければなりません。そして、どんな事でも気軽に相談出来る相手でなければいけません。(そうは言っても、あまり頼り甲斐はないのですが・・・)

フライト中、少し時間の余裕がある時を使って、私は自分が担当する訓練生に、自分がCAになる夢を抱いて、日本の小さな田舎町の Shimoda を離れて上京した事。夢叶って、タイ国際航空のCAとなり、バンコクで暮らしたこと、訪れた国々、機内でのエピソード、失敗談、人生経験などを話します。そして来豪してからは、勤務先の航空会社が次々と倒産し、何度も苦境を乗り越えてきた話も。このご時世に、こうして空を飛べることの有難さ、私達がいかに恵まれているかも話して聞かせます。私のくだらない身の上話ですが、オージーの訓練生達にとっては、はるばる日本からやって来て、ここまで行き着いた私の人生体験談がとても興味深いらしく、もっともっと続きを聞かせて!と、訓練そのもの以上に関心を示してくれます。そこから「信頼関係」が生まれ、私達は強い絆で結ばれます。トレーニングを終えて空港でさよならする時には、私を強く抱きしめて「ミホ、素晴らしい一日をありがとう!次回一緒に飛べる日まで待ちきれない!」と心から感謝の気持ちを示してくれます。果たして、私は本当にやるべきトレーニングをしっかりやれているのかどうか、自問自答は続きます。それでも、こうして気持ち良く一日のトレーニングを済ませ、感謝してもらえると、胸がいっぱいになります。訓練生のハートを掴むことが出来ると、少しでも力になれたのかなと嬉しくなります。まだまだ改善すべき点は沢山ありますが、訓練生との絆を深めること、信頼関係を築くことは、これからも大事にしていきたいと思っています。